「Advice to Orienteer」
−オリエンテーリングの基本を確認しよう!−
ICS'98 WE Champ. 著

 この文書は、1999/07/20に行なわれたOCの「海の日練習会」の参加者(新入生&上級生)のために作られた文書をホームページ掲載用に編集して作成されています。
−はじめに−

 まず最初に、これは新入生と上級生に向けて基本的なことのアドバイスとして書いたものですので、これからのオリエンテーリングへの参考にして下さい。ちょっとした私見もあるかと思いますが、自分なりに取捨選択していって下さい。夏休みの間、オリエンテーリングに励むにあたって少しでもステップアップへのヒントになればいいなと思います。(by 著者)
−第1章−
「正置が基本」

 正置=地図を正しくおくこと、つまり地図の磁北線(北)とコンパスの北をあわせ、進行方向に向くことが大切。コンパスはしっかりとお腹の前で水平に持つこと。
→これをやれば目の前に地図と同じ地形と風景が現れてくるはずです。これはオリエンテーリングをする上での基本中の基本ですね。

 上級生でも、正置を怠った時にミスをするといっても過言ではないです。またうっかりミスをしてしまった時でも、正置を落ち着いてやれば傷口を広げなくてすむはずです。常に正置をしていれば大半のミスを防げる(または最小限に押さえられる)でしょう。
 上級生も下級生も「今さら…」と思わず(自分の野生の感や思い込みにとらわれず)、正置を心がけましょう。正置を甘く見てはいけません。


−第2章−
「地図の読み方」

 まず地図の凡例を実際現地に行って一つ一つおぼえ、対応させていくことが大切です。そのためにも今年の夏多く山に入って多くレースをこなす上でおぼえていくのがいいのでしょうね。(例えば、○=炭焼釜跡、×=人工特徴物など)。ついでに、デフ記号も覚えてしまいましょう。

※15000分の1の地図では、1cm=150m、1mm=15m、0.1mm=1.5mということを忘れないようにしましょう。目で見ている1.5mは地図では0.1mmにしかなりません。ということは、当然地図上のものは現地のものよりも大きく見えることもあるということです。また地図の細かいことに目がいきずぎても駄目です。


−第3章−
「地形の大きさをイメージしてみよう」

 地図表記で「沢」と書いてあったら、一体どのような沢なのかをイメージできますか?例えば、大きな沢なのか、平らな沢なのかをイメージできますか?尾根についても言えるのですが、ポストが置かれている地形がどのような地形なのかをイメージできるかどうかが重要です。これは誰もがレース中に行っていることなのですが、ただそれがうまくイメージできる人とできない人がいます。この夏、たくさん練習のできる時に(まさに撤収の時に自分から率先してでも)、歩いて目の前に出てくる地形をイメージする練習をしてみる機会を持つのもいいかもしれません。(地図調査でも練習できるという話もありますが...)

※尾根や沢をラインとしてとらえること。地形はつながっています。→机上で尾根沢ラインをマーカーなどで引いてみると、地形のつながりが読めるようになりますよ。
 浅い、深い、広い、深い「沢」はわかりますか?


−第4章−
「ただ単に「道」とだけ思っていては駄目」

 これは特に新入生にとっては重要なことです。私も1年の頃は、黒の線(道)ばかりを見ていて、迷った事は多々ありました。ここで言いたいのは、「道の線だけでなく、茶色の線(等高線)を良く見てみよう!」ということです。一体どんな道なのかは、等高線を良く読んでみると見えてくるはずです。(「一体どんな道なのか?」→尾根道・沢道・コンタ道・道路)

※小径・・・常にどんな道なのかを考えながら道を辿るようにしましょう。
 等高線と道が平行 →  平らな道
 等高線と道が交わる → 上り or 下り (体で登っているのを感じるはず)
 等高線の間隔が密 → 傾斜がきつい道 (登るのがつらい道)
 等高線の間隔が広い → なだらかな上り or 下り

 地図から何を読み取るのかはただ漠然としていてはいけません。何を見るのか、何が自分にわかるのかを常に頭に入れておくことが重要です。
 1年生の間は、山に入って多くの情報を手に入れることが上手くなるためには必要です。頭・地図・現地この3つをしっかり対応させることですね。また、基本はしっかりやりましょう。今のうちから「感覚」や「なんとなくできてしまった」というだけで終わらせていては変な癖がついてしまいます。基本を怠らず、しっかりと地図を見ることが大切です。
 茶色(地形)と黒(道)を組み合わせて立体的に地形を見るように努力しましょう!最初は難しいかもしれませんが、回を重ねるうちに立体的に見えるようになってきます。(そのうち机上でも地形をイメージできるようになります)道の上り下りを断面図で書けますか?(机上でOK)


−第5章−
「歩測をしよう」

 歩測=自分の足で距離を測りながら進む、予め100m(150m)が自分の足で何歩分なのかを自分で測っておいて、実際のレース中での道走りやアタックの時などに使う手段。(15000分の1の地図では1cm=150m、私は走って60複歩(120単歩)です)
 上級生の間でも歩測を良く使う人とあまり使わない人といますが、何にしてもレース中ずっと歩測をしなければいけないというわけではありません。ただ、アタックの時や道走りなどの時に歩測をしていて助かったということはよくあると思うのです。私はあまり歩測をしないのですが(周りの地形を見ながら進んでしまうので)、ちょっと難しそうだなと思う地形のあるところや、ほとんど特徴的な地形のないところ(富士周辺など)では、歩測をするようにしています。

※ただ、歩測は斜面の傾斜ややぶのきついところでは歩数が変化することを頭に入れておいてくださいね。


−第6章−
「ぱっとルートが思い浮かばなかったら」

 上級生クラスになるとロングレッグを組まれることが多くなると思いますが、一体どのように行ったらいいのかわからないようなレッグがあった場合は、逆にまずアタックポイントから決めてみるといいかもしれません。(ルートをアタックポイントから見て決めていくエリートのオリエンティアもいます)アタックポイントに辿り着くためにはどのように行ったらいいのか...という様に、アタックポイントから現在自分のいる地点まで逆にルートを組み立てていったらいいんじゃないのでしょうか。

 アタックポイントが複数ある場合は、自分が確実にアタックできる地点を選ぶほうがいいですね。


−第7章−
「アタック方向の反対側に注目」

 例えば、尾根道をずっと走っていて右側にアタックするレッグがあったと仮定すると、ただアタックする方向の右側ばかり見ながら尾根道を辿って走ってしまいがちじゃないですか?そしていつの間にか「あれぇー?この沢だっけ?」ということに...。上級生の方はこんな経験ありませんか?このような時、実は道の反対側(左側)に非常に有効なチェックポイントがあったりするのです。それがピークであったり、植生界であったり...。ただ長い尾根道を走るにしても、一つ一つ右側の沢を数えていくよりは左の明確なポイントまで走ったほうがきっと速いです。これからは反対側も気をつけて見てみましょう!(これを忘れずに!)

 アタックポイントを決める時は視野を広げて見てみましょう。難しそうなアタックポイントが簡単になることもあるかもしれません。


−第8章−
「コンパスに頼ってアタックする場合には」

 特徴的な地形や植生が周辺になく、アタックポイントからコンパスに頼るしかないような場合は、コンパスをしっかり合わせ必ず歩測をしてゆっくりとアタックしましょう。(コンパスは必ず水平に持つこと)「振り返ってみたら後ろにあった」ということもあるので、歩測の120%まで行ってみて、ポストが無かったら後ろを振り返ってみましょう。
 またこのような場合、キャッチングフィーチャー(目でとらえることの出来る特徴物)があることが考えられるので、視野を広げてポストの向こう側(ポストの奥の方)を見ることも大切です。

※コンパスは必ず水平に持ちましょう。もし傾けてコンパスを持つと、時には角度が10度以上も違ってきてしまいます。


−第9章−
「ポストから脱出をする時はルートプランが終わってから」

 これは大変重要です。誰もがポストを取った後、「周りに人がいたから...」「とりあえずこっちに...」とルートも考えずにポストを脱出して失敗した苦い経験があるはずです。必ずポストから脱出する時は、ルートプラン(途中でどこをチェックして、どこをアタックポイントにするのかを決めること)を必ずし終えてから脱出しましょう。ポストを脱出する時に「10秒」余計に考えることが、後で「10分」も得をするというようなことは良くある話です。(経験者は語る(苦笑))
−第10章−
「大きくつぼった場合」

 大きくつぼった時は慌ててしまいがちですが、そこで天野さん(早稲田大学OB)がよく言っている、「やってしまったミスを取り戻そうとするな。=慌てるな。ミスがミスを呼ぶぞ」という格言のように、冷静になって「同じ失敗はもうしないぞ」と自分の気持ちを入れ換えることが重要です。このことはオリエンテーリングにおいて特に難しいことで、ミスをした後に「いかに自分をコントロールできるか」がミスをした後のレースの出来不出来に関わってきます。(いざという大切な大会で実力を出せるか否かには特に関わってくることですね)

◎同じミスをしないことが大切です。一度してしまったミスから何かを得て、今後の役に立つように心がけましょう。(要するに、レースの後にそのレースで自分のしたミスを反省し、次回以降のレースにつなげること(同じ失敗を二度と繰り返さないこと)が大切ということです)

 例えば、私が過去にしたミスでは...、
○手前の同じような地形に惑わされてパラレルエラーをし、頭がショート。
○逆正置(単なるお馬鹿...)
○登りに負けてピークを巻いているうちに、手前の尾根にひっかかりつぼる。
○ピークでの方向認識間違い(ピークで90度反対側の尾根に行こうとしたら、尾根での正置を怠ったために違う方向に行っていることに気付かず、45度の尾根に乗り間違ってしまう...)
○沢・尾根の地形の読み違い(単なる自分勝手な思い込み。きちんとピークや水系から地形を読んでいなかったために、現地に行ってから読み違っていることに気付く)
○人につられたり人についていったりして、その後現在地がわからなくなる。
...などなど、まあいろいろありましたね。(過去形じゃなくて今でもたまにミスをしてしまいますが...(苦笑))

 このように、自分はどんなところでどんな状況でミスをするのかをわかっていれば、ルートプランをたてる時にも「ミスの予見」をすることができるのではないでしょうか?

 ミスを反省する手段として、レースが終わった後にレースアナリシスを書いてみるのは非常にいいと思います。そして、そのアナリシスを他の人に見てもらいましょう。その際、どのようにルートプランをたてたのか、実際はどのようなルートを辿って行ったのか、どうしてミスをしたのか...などを書くといいんじゃないのでしょうか。次回への課題や今回の反省をわかるように最後にまとめとして書くと、次回に大いにつながる有効な練習機会になるのではないでしょうか?

 ちなみに、アナリシスについてはいつでも見てあげますので気軽に相談に来て下さい。


−第11章−
「人につられないこと」

 夏の練習会では皆同じコースを走るのでついつい同じ方向に行くことがあるとは思いますが、秋の大会などでは、沢山の人達が走っているうえに走っているコースも違うために他の人につられて脱出をしたり、ポストにアタックをしてみたら実は違うポストだったり全くわからないところにいたり...ということになってしまいがちですね。このようなことにならないようにするためには、前にも書きましたが、きちんとルートプランをしてから動くことが重要です。ルートプランがしっかりしていれば、他の人は気にならないはずです。逆に利用してしまいましょう。

 レースアナリシスでは、レースの感想ではなく、自分のレースの反省(きちんとレースを振り返ってみましょう)を書きましょうね。


−第12章−
「体調に注意」

 特に夏の練習会で気をつけて欲しいことは、夏の暑い最中、体調が悪いのに無理をしないことです。また、きちんと水分を取りましょう。女の子に関しては、日焼け止めや虫除けは重要ですね。ムヒなどを持っていくことを忘れないようにしましょう。夏は本当に暑いので、ただ単にだらだらとレースをするのではなく、何か自分に対して「今日はこれをやるぞ!これに注意してレースをするぞ!」といった課題をきちんと与えて、きびきびとレースをした方がいいでしょう。
−最後に−

 私が最後に言いたいのは、夏の五日練(他の練習会でもそうですが)では、速く帰ってくることが最大の目的ではないということです。特に新入生(上級生もそうですが)は、山に沢山入って自分の頭で地図から読み取ったものと現地(山)を対応させることが重要です。順位のような相対的な目標をたてるよりは、練習会でしっかりと基本を覚え、自分なりに「今日はこれをやるぞ!」といった課題を持って取り組むほうがいいのではないでしょうか?
 いろいろ書いてしまいましたが、新入生には少しわかりにくいところや難しいところがあると思います。ゴメンナサイ。夏の終わりにでもまたこれを読み返して、理解できることが少しでも多くなっていれば嬉しいです。長い夏休み、大いにオリエンテーリングで、OCで楽しく過ごしてくださいね。私はいつでも皆の役にたてればいいなと思っているので、気軽に話しかけて来て下さいね。

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